からっぽの中の唄

ショートショートショートの作品を散りばめた星

伝説のハリセン

街の中心に光り輝く一振りのハリセンが刺さっていた。 これは、かつて魔王とその配下の怪物たちに支配されていた我が大陸を訪れた女性が「なにやっとんねん、このあんぽんたん!」という呪文を叫びながら、魔王直属部隊を皮切りにバッサバッサと敵を叩きのめ…

枕元にきゅうりがいる生活

「おまえのことは俺が守るから安心して寝ろ」 「俺の鍛え抜かれた体に見惚れるなよ?」 といった言葉を耳元で囁かれたら、キュンとするだろうか。いいや、しない。それが片思いをしているあの人だったり、ちょっとカッコイイなと思っている先輩だったりする…

トナカイOJTサービス

クリスマスという1年に1度の限られた期間しか仕事がないトナカイの暮らしは、困窮していた。世界中の子どもたちに夢を配るだか何だか知らねぇが、赤い服に白いひげを生やしたおっさんを乗せる仕事はほぼボランティア。赤字営業みたいなもんだ。 このままじゃ…

ピクニックドラゴン

ある時、突如として地球に巨大な隕石が落下し、その隕石の中から地球外生命体が発見された。それは所謂ファンタジー世界の生き物だと信じられてきた「ドラゴン」という生き物だった。世界中がパニックになり、各国が連携して世界非常事態宣言を発令。過去の…

お菓子を食べる階段

僕の住んでいる街の最寄り駅はちょっとした観光名所になっている。 知っているかい?―――「お菓子を食べる階段」があるんだ。とっても食いしん坊で、人が落としてしまったパンくずとか、スナック菓子のかけらとか、口元につきっぱなしだったご飯粒とか、時に…

しごとに行くまつげ

私の名前はまつげ。人にその存在を知られてはいないけれど、あなたのことを一番そばで見守る存在だ。まつげによってオシャレが好きだったり、あるがままを大切にしていたり、アクセサリーを身に着けるのが好きだったり、多少性格は異なるけれど。私たちはい…