からっぽの中の唄

ショートショートショートの作品を散りばめた星

トナカイOJTサービス

 

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 クリスマスという1年に1度の限られた期間しか仕事がないトナカイの暮らしは、困窮していた。世界中の子どもたちに夢を配るだか何だか知らねぇが、赤い服に白いひげを生やしたおっさんを乗せる仕事はほぼボランティア。赤字営業みたいなもんだ。

このままじゃ生きていけない。そんな銀河宇宙を股にかけ、プレゼントと夢を配る銀河宇宙配達団体に所属しているトナカイたちが一念発起して立ち上げたのが「トナカイOJTサービス」だ。

銀河宇宙を自由自在に飛び回るトナカイたちの実体験、失敗談、格好よく飛ぶための秘訣などを1対1で学ぶことができるとあって、大人になって初めて夜空を瞬くように流れる最初で最後の仕事をすることになった星々にとって、不安を解消できる心強い味方として話題沸騰中のサービスに成長した。

こうしてトナカイたちの生活水準はうるおいを取り戻し、星々は次々に人々に注目される流星となった。そしてクリスマスの夜、流星が流れる時にリンリンリンと鈴の音が聞こえるようになり、それがサンタクロースが街にやってくる合図として親しまれるようになったのだ。